移植
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灌流保存装置を使用して施行した献腎移植の2例の経験
木原 優今野 理沖原 正章赤司 勲松野 直徒岩本 整
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s199

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抄録

移植待機患者数と提供される臓器数との差は大きく、臓器不足は深刻な課題である。この課題の解決のために、移植可否の判断の難しい臓器の機能を診断する技術、臓器機能を維持し機能改善をはかる技術など、新しい医療技術開発が求められている。こうした背景の中、機械灌流保存が注目されている。当科では2020年から献腎グラフトに対し可能な場合に灌流保存装置を使用する事としている。これまで2例に灌流保存装置を使用して献腎移植を施行したため経過を報告する。灌流装置として、腎臓用臓器保存庫(CMP-X08)を使用した。(症例①)脳死下提供。レシピエントは57歳男性。当施設で2腎の提供であったため、1件目の移植を行っている際に機械灌流を行った。灌流時間は220分で灌流は良好であった。術後のATNはなく尿量は維持され、術後第16病日に退院された。退院時S-Cr1.1であった。(症例②)心停止下提供。心停止後に心マッサージ開始から心拍再開まで74分かかったいわゆるマージナルドナーであった。レシピエントは66歳女性。灌流時間は、143分で灌流は良好だった。術後のATNは8日間で透析離脱となった。合併症なく経過し、術後第23病日に退院となった。退院時S-Cr1.66であった。2症例のレシピエントの経過に関しては問題なく順調である。灌流装置への様々な不安があったが、手術に大きな支障をきたす事はなかった。症例がまだ少ないため件数を重ねたうえで今後も報告をしていきたい。

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