移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
Controlled DCD(心停止ドナー)に我々はどう向き合うか:心臓移植の立場から
松田 暉
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s22

詳細
抄録

 欧州を中心に生命維持治療中止(WLST)を伴うcontrolled (c)DCD(C:circulatory)が活発化し, 腎臓から肝臓, 肺さらに心臓へと広がり,ドナープール拡大に繋がっている. 心臓移植の立場からわが国への導入の課題を考察した.

 cDCDでの心臓移植は豪州のSt.Vincent病院で2014年から, 英国のRoyal Papworth 病院で2015年から, 共に体外機械灌流を用いる方法で始まり, 温阻血時間を短縮し, 成績は脳死移植(DBD)と遜色なく, 豪州, 欧州内, 米国で広まっている. 対象はMaastricht(M)分類IIIで, WLSTに続く循環停止(死亡宣告)後, 体内での脳を除く常温灌流後に心摘出するか(英国), 体外に直接摘出して灌流装置に移す方法が行われている.

 ドナ―プール拡大にcDCD導入が期待されるが, 「臓器提供と死」の定義論からDBDへの影響を危惧し, 特に心臓は,と議論は封印されてきた.しかし,体内再灌流を避け, 体外機械灌流の使用で倫理的, 医学的問題は少なくなると思われる. cDCDはM分類III,IVが対象となりWLSTが基本となる. WLSTは3学会終末期医療ガイドライン等に記載されているが臓器提供に繋げる道が未整備である. 課題は現在のuncontrolledDCDにcDCDを加た新たな臓器提供の枠組みを(省令等で)どう混乱なく作れるかであろう. cDCDは提供者側の意思を尊重する上でDBDを補完する役割も大きく, 社会的理解が求められる.

 ドナー不足が深刻なわが国でのcDCDの役割りと課題について臓器横断的議論が待たれる.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top