移植
Online ISSN : 2188-0034
Print ISSN : 0578-7947
ISSN-L : 0578-7947
当院のマージナルドナー使用の取り組み
此枝 千尋佐藤 雅昭川島 峻柳谷 昌弘長野 匡晃北野 健太郎中島 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s300

詳細
抄録

日本臓器移植ネットワークによる本邦の脳死肺移植までの平均待機期間は900.7日と長期に及ぶ。脳死臓器提供者から可能な限りの肺を受諾するためには移植に適する肺か否かの的確な判断や、マージナルドナーである場合はそのリスクに見合ったレシピエントの決定が重要と考える。再びチャンスがあると予想される待機順位上位の患者にはハイリスクすぎるマージナルドナーであっても、病状進行した下位の患者では、利益がリスクを上回ると考えられる場合がある。当院で肺移植を受けた患者の臓器斡旋時の順位と、登録から移植までの期間を調べた。

対象は2019年4月から2021年3月までに当院で脳死肺移植を受けた患者40名。肺受諾時の斡旋順位は2位から79位までと幅広く(平均15位)、21位より下位での受諾は6名あったが、6名とも周術期経過良好であった。一方、肺移植までの平均待機期間は25-2083日(平均677日)であった。

当院では待機患者の状態を適時把握しマージナルドナーというリスクを許容すべき状態かどうかを常に検討している。待機期間が長くとも病状が安定している患者では、肺移植後の長期予後が決して良好と言えない現状では、マージナルドナーを移植することはリスクが利益を上回る可能性があると考える。長期予後に関しては今後更なる検討が必要であるが、待機中死亡を減らすためにマージナルドナーの可能な限りの受諾とリスクに見合うレシピエント選択が重要と考える。

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top