移植
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possible donorから臓器提供の可能性が失われる要因と実態
田村 智高橋 恵関 一馬上村 由似佐川 美里吉田 一成片岡 祐一浅利 靖
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s330

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抄録

【背景】諸外国では脳死の可能性がある患者(PD:possibleドナー)が搬送された段階から臓器移植専門のスタッフが介入する例がある。来院時に自動的にPDを抽出した場合、どの程度が脳死前提条件を満たすのか検討する。

【方法】2018~2020年に当院救命センターに搬送された患者のうち、来院時の情報からPDの条件(JCS100以上の脳血管障害または頭部外傷、院外心肺停止)を満たした75歳以下の患者を対象とする後方視的観察研究。PDから、①脳死前提条件を満たし、②脳死とされうる状態と診断され、③オプション提示を受け、④臓器を提供した患者のそれぞれの割合を検討した。

【結果】対象は591例で原因疾患は、脳血管障害296例(50%)、心肺停止後196例(33%)、頭部外傷99例(17%)であった。脳死の前提条件を満たした症例は86例(14%)、脳死とされうる状態と診断されたのは17例(2.9%)、オプション提示を受けたのは23例(3.9%)、臓器を提供した患者は6例(1.0%)であった。疾患別では、脳血管障害は①8.8%、②2.4%、③4.7%、④1.0%で、心肺停止後は①30%、②5.0%、③4.1%、④1.5%、頭部外傷は①10%、②0%、③10%、④0%であった。

【結語】来院時にPDを抽出した場合、14%が脳死の前提条件を満たすが、その後オプション提示まで至る例は少ない。しかしながらオプション提示後は3割が臓器提供をしており、そこに至るまでの原因を明らかにすることで提供例の増加につながる可能性がある。

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