移植
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脳死肺移植後の重篤な消化器合併症
宮原 聡西野 菜々子緑川 健介阿部 創世岩中 剛上田 雄一郎早稲田 龍一白石 武史佐藤 寿彦
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s334

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抄録

移植後の消化器合併症は時に原因究明と治療に難渋する。当科で経験した、肺移植後の重篤な消化器合併症5例を報告する。

症例1は60歳男性、移植後14日目。胸痛と呼吸苦が出現し、完全房室ブロック、ST上昇から冠攣縮性狭心症と診断、直後に胸腔ドレーン刺入部から腸液の漏出を認め、緊急手術で十二指腸潰瘍穿孔が確認された。症例2は60歳男性、移植後1年半。心窩部痛を主訴とし多発潰瘍を認めた。PPI増量中に急性拒絶を発症しステロイドパルスを行った3週間後に潰瘍出血を認め、CMV胃腸炎と診断。症例3は60歳男性、移植後4年7か月。右下腹部痛を訴え虫垂炎の診断で抗生剤加療を行ったが、すぐに症状再燃し緊急手術を行った。腫大した虫垂と腹腔内リンパ節の腫大からPTLDと診断された。症例4は54歳女性、移植後3年。慢性腎不全で外来通院中に下血を来たし、回腸末端の潰瘍性病変を認めケイキサレート内服による粘膜障害が判明した。症例5は53歳男性、移植後4か月。急性拒絶反応に対してステロイドパルス中に季肋部疼痛が出現し、free airを認め緊急手術となった。横行結腸憩室穿孔が認められ人工肛門増設で減圧を行った。1週間後の注腸造影で上行結腸の造影剤の漏出が認められ、右結腸切除を行い多数の憩室と穿孔を確認、ムーコル感染による腸管穿孔と診断された。感染症による消化器合併症は特に劇症であり致死的である可能性が示唆された。

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