移植
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小児心臓移植の適応外判定には限界がある。「適応外とは言い切れない」とは?
成田 淳橋本 和久廣瀬 将樹石井 良石田 秀和大薗 恵一平 将生渡邊 卓次澤 芳樹上野 高義
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s38

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抄録

近年の小児重症心不全に対する心臓移植判定の増加と共に、適応に係る非常に難しい判断を要する場面に遭遇する。適応外基準に合致するような全身性疾患や遺伝性疾患であってもその症状発現や各臓器の重症度は非常にスペクトラムが広く、将来的な予後を予測することが難しい。

特に小児の脳神経障害の評価において、重症心不全が急性増悪した状態ではすでに深鎮静の管理下にあり、画像所見でしか情報が得られず十分な評価が困難となる。その画像診断ツールも補助循環装着後にMRI撮像は不可能となり、診断は限定的となる。また判定評価時に精神運動発達遅滞を認めていても重症心不全による影響と考え、成育歴の聴取が問題なく明らかな遺伝子・染色体異常がない限り、最終的には「適応外とは言い切れない」という判断になる。当院で脳神経学的評価の元、適応外判断となった例などを挙げて、その適応評価と基準の再考を議論したい。

また、肝腎機能においてもStageⅣ以上の腎不全や新犬山分類のF4と判断される肝硬変でない限り、概ね移植適応は得られるが、それぞれの臓器の予備能は極めて低く移植後予後に大きく影響する事は疑いの余地がない。

有生思想的な観点ではなく、生命予後だけが移植適応を規定するのかという事を議論し移植予後の向上、医療経済や社会生産性も含めて移植後の各臓器障害の程度やQOLなどについて深く追及した基準が求められると考えている。

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