2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s521
【背景】救急搬送される患者家族は切迫した状況下で「患者の最期」を認識し、特にコロナ禍では面会制限の中で代理意思決定する現状がある。
【方法】2018年~2021年に救命救急センターに搬送され、75歳以下の脳死前提条件を満たした患者を対象とした後方的観察研究。COVID-19感染拡大に伴い、面会制限を行った2020年2月を境に前/後2群に分け、治療方針決定までの日数、オプション提示を受けた割合、家族への病状説明回数や面会回数、終末期の過ごし方を比較する。
【結果】対象は84例で、治療方針決定までの日数は、前/後で1.8日/2.2日、オプション提示の割合は、前/後で18%/24%であった。家族への病状説明の平均回数は前/後で1.9回/1.7回で、面会回数は、前/後で3.6回/2.8回であった。前群では脳死下臓器提供2件、角膜提供 2件に対し、後群では臓器・角膜提供とも0件であった、終末期の過ごし方は前群では「子どもを含めた付き添いやケア参加」が多く、後群では「キーパーソンや少人数で短時間での面会」が多数を占めた。
【結語】コロナ禍において、オプション提示は上昇しているが、病状説明や面会回数が減少し、患者の病状や様子を間近に感じながら終末期代理意思決定する機会が失われていることが示唆された。コロナ禍における終末期代理意思決定支援のあり方の再構築が必要である。