2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s525
【目的】我々は脳死小腸移植を円滑に実施するため、移植前カンファを充実させ、脳死登録時に術式を詳細に検討し移植時に再度共有、移植後も多職種で検討し課題を抽出する等の取り組みを行なってきた。その成果と課題について検討した。
【対象と方法】脳死小腸移植10例10回を対象とし、前期5例(2007年~2010年)と後期5例(2011年~現在)に分け、ドナー/レシピエント手術、移植後状況、グラフト生着率について、後方視的に比較検討した。
【結果】ドナー/レシピエント体重比、移植時年齢、原疾患、移植前の開腹手術回数に差はなかった。移植待機日数(中央値)は前期179日、後期341日であった。レシピエント手術時間は937分、636分(p=0.009)、麻酔時間1061分、844分(p=0.009)と有意に短縮した。体重あたりの出血量・濃厚赤血球輸血量、術後在院日数、グラフト生着率は前後期で差は無かった。
ドナーチームは、ナショナルチーム医師を含めた編成に変わり無かったが徐々に当科主体の編成へ移行し、後期は全回の派遣でグラフトを摘出し得た。冷虚血時間は前期495分、後期472分で差は無かった。
【結語】レシピエント手術は、術前後カンファの充実により麻酔・手術が円滑に行え、医療者の負担軽減につながると考えられた。ドナーチームも安定した摘出業務が行えていたが、冷虚血時間の差は無く、互助制度がチームの移動負担軽減に寄与する可能性が示唆された。