2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s527
【背景】これまでの小腸移植において,消化管内腔を対象とした治療的戦略の研究は報告されていない.今回,細胞保護作用がある一酸化炭素(CO)を遊離する分子(CORM)を粘膜内投与し,効果を判定した.
【方法】LEW-Ratを用いて同所性小腸移植モデルを作成後,CORM(50μM)を含んだ生理食塩水で小腸グラフト内腔を満たし6時間冷保存した.対照群としてCORMを48時間空気中に放置しCOを脱気したもの(iCORM),メカニズムの解析としてグアニル酸シクラーゼ(sGC)の阻害剤であるODQを用いた.いずれも3時間後に犠牲死させ,サンプルを採取した.
【結果】14日間生存率はiCORM群:41%(6/16),CORM群:83.3%(10/12)と改善した.CORMはiCORMに比べ,腸管の病理学的変化,透過性亢進を抑制し,炎症は改善していた.ODQにてCOの保護効果が失われ,sGC/cGMPの関与が示唆された.
【結語】CORM管腔内投与は,再灌流後の小腸グラフトにおける虚血再灌流障害を制御した.