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今求められる日本流のドナーアクションとは?
中尾 篤典
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s138_2

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抄録

岡山大学病院では、2017年から2022年までの5年間で、3例の小児ドナーを含む16例の脳死下臓器提供を行ってきた。脳死とされうる状態と診断した症例は40例、頚髄損傷など医学的理由で臓器提供の選択肢提示を行わなかった8例をのぞく32例に選択肢提示を行い、半数にあたる16例が臓器提供に至った。選択肢提示を行った症例のうち、意思表示を書面で行っていたのはわずか2例であった。臓器提供は、終末期における看取りの一つの方法にすぎないことは認識されているが、実際には神経学的予後が期待できない場合には、延命治療の中止の選択肢しか提示されない場合が多い。臓器提供を行うか否かを決めるのは医療者ではない。決定するのは患者であり患者家族である。臓器提供数が欧米と比較して本邦で少ないのは、文化や死生観の違いのためではなく、医療者の努力不足・認識不足に起因している。臓器提供は患者の権利であり、必ず選択肢提示は行わなくてはならない。

岡山大学病院の取り組みは、何も特別ではない。医療者が全力で救命を行うことが大原則であり、不幸にも脳死とされうる状態と判定した場合でも、家族が「終末期」の受け入れをするまでは臓器提供の話題は出さないようにしている。選択肢提示の適切なタイミングは、看護師を含めた多職種カンファレンスで検討する。選択肢提示での医療者の役割は、家族「が」方針を決めるのではなく、患者の意思を家族「で」汲み取るようにサポートするだけである。重症救急患者の適切な搬送先について、消防と連携することも重要であるが、もっとも必要なことは医療者の教育であり、欧米の真似事ではなく日本文化にあわせたドナーアクションが求められる。

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