移植
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米国肺移植施設における働き方の工夫
高橋 剛史Patterson G. AlexanderPuri VarunKreisel Daniel
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s149_2

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抄録

【背景】脳死移植は平時業務と同時並行で行われ、手術は時間外に開始されることが多い。手術終了後は術後管理が待っており過酷である。私が従事する米国でも移植医療の環境は厳しいが、改善のために工夫がなされており、紹介したい。

【内容】私が勤務するワシントン大学は米国で初の肺移植が行われ、年間70から100件の肺移植が行われるhigh volume プログラムである。我々の施設ではprocurement surgeonが1人おり、ドナー肺手術を専門に行う。次に、米国初、2001年設立のドナー特化施設である Mid-America Transplant(MTS)を紹介する。全てのlocalドナー手術が行われ、手術開始時間は柔軟に対応可能で、効率的な運営がなされている。また、ワシントン大学では2022年より、トロント大学で開発、冷蔵庫内を10度に設定、肺機能を障害せずに保存を可能にした臓器保存用冷蔵庫を導入した。日中のレシピエント手術を可能にした。レシピエント側では手術の効率化がある。胸部外科専門の手術室フロアを有し、麻酔科、看護師皆胸部外科手術に精通している。肺移植手術のプロセスは定型化され、吻合方法は気管支、肺動脈、肺静脈全て同じ方法で、両側肺移植は4から6時間以内に終了する。最後に、ワシントン大学では移植の各局面において中心となる科、職種が異なる。術前、術後の外来はpulmonologistが、術直後の管理はICU physician が中心となる。これらの協力体制により外科医は手術に専念することが可能となる。

【結語】我々の施設では労働環境改善のために工夫がなされている。医療や法制度の違い、人的財政的制限により日本での導入は困難かもしれないが、参考になれば幸いである。

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