2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s156_1
1968年当時中山恒明教室の大学院生だった小生は、免疫学の恩師である多田富雄先生がアメリカ石坂公成先生の研究室から持ち帰ったIgEの血清を飛行場で受け取った。それは、日本での抗体産生の免疫メカニズム解明の研究が始まる第1日となった。そのIgEの産生が抑制されるT細胞を発見した当初、多田先生はそのメカニズムに懐疑的であられたが、データが蓄積されると共にその目が輝きだし、1971年サプレッサーT細胞として論文を発表した。
以来、Tリンパ球の共刺激分子・エフェクター機能や細胞死をはじめ、免疫記憶と呼ばれる抗原選択性と新たに獲得する応答性の変化、中でも免疫寛容という抑制性免疫記憶の誘導と維持メカニズムに強い興味を持ち、その解明に挑戦してきた。 臓器移植モデルにおける拒絶反応の制御はまさにその研究テーマであり、これまで多くの移植医達との共同研究で、FK506、CD86分子、アナジ―T細胞療法の開発につなげてきた。本シンポジウムでは、臓器移植後拒絶反応への挑戦の歴史と将来の展望を伝えていきたい。