移植
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膵臓移植におけるエベロリムスによる免疫抑制療法について
栗原 啓剣持 敬伊藤 泰平會田 直弘
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s188_2

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抄録

[背景]

膵臓移植の標準的な維持免疫抑制療法はミコフェノール酸モフェチル(MMF)を含む3剤併用が一般的であるが、新型コロナウイルス感染時にはMMF減量・中止、エベロリムス(EVL)へのconvert等が推奨されている。当科では、以前より感染症などにより、MMF減量あるいは中止が必要な場合、EVL add onもしくはconvertを選択している。膵臓移植におけるEVL投与と移植成績について検討した。

[方法]

当科で2012年から2021年まで実施した膵臓移植のうち、1年以上が経過し抗HLA抗体測定が可能であった60人を対象とし、後方視的検討を行った。

[結果]

60人の患者のうち、初期投与量のMMF1500mg/日が維持可能であったのが26例(MMF維持群)、MMF単純減量・中止した23例(MMF減量群)、MMFの減量・中止に対しEVLの投与を行ったのが11例(EVL群)であった。移植後13人の患者にDSA産生がみられたが、MMF維持群3例(12%)、MMF減量群8例(35%)、EVL群2例(18%)、であった。DSAはグラフト生着率に影響し、DSA陰性例の3年グラフト生着が100%であったのに対して、DSA陽性例は60.6%であった。また、EVL は副作用として耐糖能異常が指摘されているが、投与前後の糖負荷試験、内分泌機能検査では変化なく、膵臓移植後の免疫抑制療法として問題無く、使用可能であった。

[まとめ]

EVLは、膵臓移植においてDSA産生を抑制し、耐糖能にも影響を与えなかった。新型コロナウイルス感染時の免疫抑制療法として有用であると考えられた。

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