移植
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本邦の肺移植におけるex vivo lung perfusion (EVLP)の現状と展望
中島 大輔栢分 秀直田中 里奈山田 義人豊 洋次郎濱路 政嗣大角 明宏芳川 豊史Keshavjee Shaf伊達 洋至
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s210_2

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抄録

EVLPは、正常体温(37℃)下のより生理的環境に近い、すなわち換気と灌流が維持された状態で臓器を保存することにより、移植前に体外での的確な肺機能評価と臓器保存時間の延長を可能にした。世界各国の臨床試験にて、EVLP評価により、移植適応ありと判断されたマージナルドナー肺を用いた肺移植は、EVLPを必要としない通常の脳死肺移植と同等の良好な移植後成績を示しただけでなく、ドナー肺の使用率を倍増させることに成功している。本邦においても、EVLPを用いた肺移植は、岡山大学にて単発で行われた後、2020年に京都大学にて再導入された。2020年に京都大学に斡旋された脳死ドナー肺41例中、肺移植を行ったのは19例で、内、EVLPによる肺機能評価を必要としたのは2例であった。他施設にて移植が完全に断念されたマージナル肺を、EVLPにより的確に評価することで救い上げ、移植に成功することができた。

 また、移植の適応外と判断された理由で最も多かったのは、肺炎であった。EVLP中の広域抗生剤治療は、ドナー肺から検出された細菌数、灌流液中のエンドトキシンレベル、早期移植肺機能不全に関連した炎症性サイトカインを有意に減少させ、EVLP中の肺機能を改善することが証明されている。今後は、このようにEVLPシステムを、マージナル肺の単なる機能評価から、障害肺の治療・修復のプラットフォームとして用いることで、さらなるドナープールの拡大が期待される。

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