移植
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肝小腸移植の適応となった重症腸管不全関連肝障害の経験
工藤 博典佐々木 英之福澤 太一中村 恵美安藤 亮大久保 龍二櫻井 毅中島 雄大多田 圭佑佐藤 則子和田 基
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s216_1

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抄録

【症例1】10歳、男児

現病歴:日齢4発症の中腸軸捻転による超短腸症例。7歳時に重症腸管不全関連肝障害(IFALD)に陥り、小腸移植を考慮した精査加療目的に当科に紹介された。

経過:内科的管理により一旦は改善も、消化管出血、敗血症を契機にIFALDは急速に進行、肝小腸移植の適応と判断した。検討の上、血液型一致の父をドナーとする生体肝移植を先行し脳死小腸を短期間待機、適合ドナーが現れない際には血液型一致の母をドナーとする生体小腸移植を行う方針としたが、肝移植2カ月後に脳死小腸移植を施行した。

【症例2】23歳、女性

現病歴:新生児期発症の広域型ヒルシュスプルング病。静脈栄養に依存し、22歳

時の残存腸管切除後にIFALDが増悪し肝不全に移行したため、肝小腸移植を目的に当院に紹介された。

経過:患者は下大静脈欠損、右腎欠損、腸管皮膚瘻を認め、脳死肝小腸同時コンポジットグラフト移植の適応と判断した。脳死肝/小腸移植適応評価、高難度新規医療技術の申請を行い、厚生労働省へもコンポジットグラフト移植の可否を確認した。各々承認され移植登録、待機したが、肝・腎障害が進行し移植には至らなかった。

【まとめ】本邦で施行し得た肝小腸移植は、二名の生体ドナー、あるいは生体と脳死ドナーを組み合わせた移植であった。しかし脳死同時肝小腸、特にコンポジット移植でしか救えない症例も存在し、早急な制度的対応が必要である。

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