移植
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臓器移植後レシピエントに発症したCOVID-19の治療経験から得た知見
福原 宗太朗田原 裕之築山 尚史今岡 祐輝中野 亮介坂井 寛谷峰 直樹黒田 慎太郎大平 真裕井手 健太郎田中 友加小林 剛大段 秀樹
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s267_2

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抄録

COVID-19の移植医療における基本指針は随時改訂を経ているが、免疫抑制剤の調整に関しては、本邦からの明確な指針はない。我々は、臓器移植後にCOVID-19を発症した11例を経験し、その報告をする。症例は、腎移植後が6例、肝移植後が3例、肺・腎移植後は1例、膵・腎移植後が1例であった。重症度は軽症が9例、中等症と重症が1例ずつあり、治療は自宅待機の軽症1例を除き、全例で抗ウイルス薬もしくは中和抗体を使用した。全例でワクチン接種は行われていた。軽症例は感染前のCFSE色素染色法リンパ球混合試験(CFSE-MLR)の結果をもとに、中等症、重症例は、感染直後にもCFSE-MLRを行い、免疫抑制剤の調整を行った。

中等症は男性で、腎移植後の症例であった。CFSE-MLRで抗ドナー応答亢進していたため、免疫抑制剤は減量せず、発症後24日目に軽快退院となった。重症例は男性で、肝移植後の症例であった。PCR陽性時は中等症で、発症後11日目までは経過は安定していた。CFSE-MLRでドナー特異的低応答であったため、免疫抑制剤は減量した。しかし、多数の重症化リスク因子を持っており、発症後12日目に呼吸状態の悪化、敗血症の併発などを認め、発症後142日目に永眠された。

CFSE-MLRを使用し、患者それぞれの免疫抑制状態に合わせた免疫抑制剤の調整が可能であった。重症化リスクを多く持つ症例に関しては、発症後から時間が経った後に重症化することもあり注意が必要と思われた。

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