移植
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タクロリムス投与量調整を行い治療を完遂することができた生体腎移植後肺結核の一例
平野 一藤原 裕也岡部 知太川床 友哉中森 啓太谷口 俊理前之園 良一中村 公南 幸一郎上原 博史能見 勇人小村 和正稲元 輝生東 治人
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s285_1

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抄録

【症例】

37歳女性。29歳時に父をドナーとし生体腎移植施行。CKDの原疾患はIgA腎症。4年目にIgA腎症再発し、ステロイドパルス療法、扁桃腺摘出術を施行した。その後は腎機能、尿所見とも安定して経過していた。7年目に胸部異常陰影あり、精査にて肺結核の診断。抗結核剤4剤による治療開始となった。

【経過】

リファンピシン(RFP)開始に伴い、CYP3A4代謝亢進によるタクロリムス(TAC)の血中濃度低下が想定された。TAC trough値を維持するための投与量は約5倍を要した。TAC trough値のみならず、AUCも測定し、血中濃度を維持した。RFP併用中はTACの代謝が促進されている状態であるにも関わらず血中濃度高値が遷延していた。あらかじめTACの血中濃度低下を想定し、投与量設定を行なったが、想定以上に濃度のばらつきが生じ、コントロールに難渋した。

【考察】

RFPの完全な酵素誘導が消失するまでは2週間との報告もあったが、本症例では投与中止後2週間のAUCは高値であったため、酵素誘導期間はさらに長期であったことが示唆された。

経過中TACの濃度低下による拒絶反応、濃度上昇によるCNI急性毒性などを招くことなく腎機能は維持できた。経過中、TAC trough level、AUC0-4の頻回モニタリングにより、TAC投与量調整を行い、免疫抑制剤を維持しつつ肺結核治療を完遂することができた。

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