移植
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腎移植後膵移植の経過観察中に子宮体癌を発症した1例
石川 博補小林 隆三浦 宏平田崎 正行池田 正博斎藤 和英坂田 純若井 俊文
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s296_1

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抄録

 臓器移植後の長期生存者の増加に伴い、晩期合併症として悪性腫瘍が問題になっている。今回、腎移植後膵移植(PAK)の経過観察中に子宮体癌を発症した1例を報告する。

 症例は49歳女性。8歳で1型糖尿病を発症しインスリン療法を導入された。29歳時、糖尿病性腎症に対し血液透析を導入された。31歳時に生体腎移植を施行され、透析を離脱した。36歳頃から無自覚低血糖発作を頻回に生じるようになり、腎移植後膵移植の適応と判断された。移植待機中の46歳時に右卵巣嚢腫に対して腹腔鏡下右卵管卵巣摘出術を施行された。組織学的診断は良性右卵巣内膜症性嚢胞であった。以後、産婦人科でも経過観察された。48歳で脳死ドナーよりPAKを施行され、インスリン離脱を達成した。49歳時、経過観察目的の子宮体部スメア検査でClass V、adenocarcinomaと診断された。CTおよびMRIで子宮体癌と診断され、左卵管卵巣摘出術を伴う腹部子宮全摘出術を施行された。特段の術後合併症を認めず、術後8日目に退院となった。術後病理所見より子宮体癌 IA期と診断された。術後は引き続き産婦人科で経過観察されている。術後23か月経過し、明らかな再発所見を認めていない。

 膵臓移植後の発癌は致死的な晩期合併症となる可能性がある。発癌を考慮した定期的な検診を行うことが重要である。

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