2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s318_1
背景:本法では2016年より保健収載されたリファキシミンは殺菌的に働く難吸収性抗菌薬であり、肝性脳症患者に使用されている。脳死移植において、リファキシミンの術前投与により虚血再還流障害が抑制され、抗炎症作用をもたらしたという報告がなされており、腸内細菌に作用することで肝保護効果をもたらしたとされている。目的:本研究では後ろ向き研究としてリファキシミン投与による臨床経過への影響を評価する。2016年1月から2022年12月の期間に当施設にて施行された初回成人肝移植においてレシピエントの術後経過の解析を行った。結果:初回成人肝移植症例は125例であり、術前にリファキシミンが投与された症例は26例であった。リファキシミン投与と早期グラフト不全、(EAD: 手術7日後T-bil≥10 mg/dL、PT-INR ≥1.6 、手術7日以内AST,ALT>2000 IU/L )、死亡率、拒絶反応の発生率、敗血症発症率には有意差を認めなかった。傾向スコアマッチングを行いマッチングされたのはいずれも20例であった。死亡率、拒絶反応、敗血症発症率には以前有意差はなく、POD3,5でリファキシミン投与群で有意に低値であったbranched-chain amino acids and tyrosine molar ratio (BTR) が、POD7,14ではコントロール群と同等まで回復していた。結語:本研究は症例数が少ないながらもリファキシミンが肝性脳症の改善以外にも周術期合併症を減少させる可能性が示唆された。症例を集積しさらなる検討が望まれる。