2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s331_1
【諸言】小腸移植の成績改善には小腸特有の拒絶反応メカニズムの解明が必要である。本研究ではシングルセル解析および腸内細菌叢解析を行い、ドナー、レシピエント間における腸管免疫細胞のダイナミズムと腸内細菌叢の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】当院で施行された脳死小腸移植の1例において、術後経時的に内視鏡下で小腸生検および腸管上皮付着菌の回収を行なった。腸内細菌は16S rRNA解析を行い、 グラフト腸管細胞におけるsingle cell RNA解析にSingle Nucleotide Polymorphism (SNP)解析を加えて解析を行う新手法によりドナー由来細胞、レシピエント由来細胞を分けて捉えることを可能とし、組織中の細胞分画や遺伝子発現解析を行った。
【結果】シングルセル解析により、レシピエント由来細胞においては急性拒絶反応に伴い骨髄球の割合が増加し、拒絶後にCD8+T細胞に置き換わるダイナミズムが確認された。また、急性拒絶反応の間グラフト腸管におけるレシピエント由来細胞の数は非常に少なかった。腸内細菌フローラパターンは移植前後で大きな変化を認めた。
【考察】我々は脳死小腸移植において初めて急性期拒絶反応における腸管内免疫細胞のシングルセルレベルでの遺伝子発現および細胞種類のダイナミズムをドナー、レシピエント由来細胞を分ける新たな解析技術を利用することで可能にした。また急性拒絶反応には腸内細菌叢の変化が関わっている可能性が示唆された。