2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s331_3
[背景]結腸を含む小腸移植は腎保護効果の面からも十分長の残存結腸が有さない患者に有用な術式であると報告されている。今回我々はSRTRデータベースを用いて結腸付き小腸移植がグラフト生着及び拒絶反応に及ぼす影響を後方視的に検討した。
[対象と方法]1998年から2017年の間に小腸移植を受けた2372例を対象に、結腸を含む小腸移植372例(結腸+群)と結腸を含まない2000例(結腸−群)を傾向スコアマッチングを用いてグラフト生着率、患者生存率、移植後6か月以内の急性拒絶発症の頻度を比較した。
[結果]傾向スコアマッチング後の結腸+群356例と結腸−群356例を比較してもグラフト生着率(P=0.812)、患者生存率(P=0.696)に有意差はなかった。一方で、移植後6か月以内急性拒絶反応の発症率は結腸+群40.1%と結腸−群32.1%に比べ有意に高かった(P=0.043)。全コホートで移植後6か月以内急性拒絶反応のリスクを多変量解析すると、結腸付きグラフト、高齢ドナー年齢、B細胞クロスマッチ陽性、免疫導入療法使用が独立した危険因子であった。さらに、結腸付きグラフトを用いた372例でそれらの因子と移植後6か月以内急性拒絶反応の発症率との関連を見てみると、ドナー年齢が高くなるにつれ急性拒絶の発症率が上昇する傾向を認めた。
[結語]結腸付きグラフトはグラフト生着率に影響は及ぼさないが、移植後早期の拒絶反応のリスクを高める可能性があり、ドナー年齢はそのリスクに影響し得る。