2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s339_1
背景:欧米に習い、本邦でも心臓死ドナーからの肺移植を検討することは重要である。本研究の目的は、特定機能病院における院内死亡患者に注目し、Maastricht category IIIに近い状態で、心停止後に肺移植ドナーとなり得る患者を顕在化し、その特徴を見出すことである。
方法: 2019年1月から同年12月まで東北大学病院における全死亡患者585人を対象に後方視的に検討した。死亡時年齢18未満70歳以上、死因または原病名において肺疾患、悪性腫瘍、重症感染症、胸部外傷など医学的に移植不適と判断される症例は除外された。加えて肺の質的評価のため年齢、喫煙歴、および胸部レントゲン所見が評価された。
結果:条件により553例が除外された。残る32例のうち、本人あるいは家族が延命治療を希望されず、積極的生命維持装置の中止は無いにせよ、院内にて心臓死を待たれた患者は30名存在した。平均年齢は53.2 歳、男性22例(73%)、喫煙歴20 pack-year以下は24例(80%)、胸部レントゲン所見が MinorもしくはClearと判断された症例は13例(43%)あった。これら13例の死因は脳出血5例(38%)が最も多く、全例が救急科において加療され、入院から死亡までの平均日数は8.2 日であった。
結語:血液ガスや気道内分泌物の評価は欠落しているものの、特的機能病院において心臓死ドナー候補となり得る患者は、年間13/585例(全死亡患者の2.2%)程度いる可能性が示唆された。重要なドナー候補として考慮すべきであり、救急科との連携から環境を整えていくことが重要であろう。