移植
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生体肝移植15年後に右横隔膜ヘルニアを来した1例
大矢 雄希有留 法史林田 信太郎猪股 裕紀洋
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s390_2

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抄録

【はじめに】

肝移植後レシピエントにおける横隔膜ヘルニア発症の報告はまれであり、ほとんどの報告は小児である。今回、われわれは生体肝移植後15年で右横隔膜ヘルニアを発症した成人例を経験したので報告する。

【症例】

症例は27歳時に低血糖を契機に膵インスリノーマ、多発肝転移と診断された。その後2回のSMANCS-TAEの治療をうけ、徐々に肝不全を呈した。そのため、30歳時に母親をドナーとした生体肝移植術(左葉グラフト: 420g、GRWR: 1.0%)、膵体尾部切除、脾臓摘出術を施行した。手術時に、肝膿瘍および横隔膜下膿瘍を認め、脆弱な横隔膜を損傷し縫合閉鎖を行った。移植後は順調に経過し、インスリノーマの再発を認めず定期的な外来通院を行っていた。46歳時に咳嗽および間欠的腹痛を認めるようになった。1ヶ月ほど経過した深夜に心窩部痛を主訴に近医救急外来を受診し、CTにて右横隔膜ヘルニアと診断され当院紹介となった。CTでは右胸腔に結腸および小腸の脱出を認め、脱出腸管の造影は良好であった。緊急入院の上で翌日に手術を施行した。横隔膜に径3cm大および2cm大の隣り合う二つの欠損孔を認めた。周囲には修復に用いたと考えられる縫合糸を認めたため、移植手術の際に損傷し修復した部分に横隔膜ヘルニアが発生したものと考えられた。欠損部位は、十分に単閉鎖可能と判断し、2つの欠損孔をひとつとして非吸収糸で縫合閉鎖した。術後は順調に経過し、術後11日目に退院となった。

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