2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s169_1
近年、NASH肝硬変に対する肝移植の症例は増加傾向にあり、当科においてもその割合は増加している。一方、合併症や長期予後に関して一定の見解がないのが現状である。今回、2009年1月から2021年12月までに当科で施行した肝移植症例164例を対象に、NASH肝硬変に対する肝移植の短期および長期成績を検討した。また、移植後の脂肪肝再発が長期予後の観点で問題となっており、移植後の脂肪肝再発のリスク因子の検討も併せて行った。15例がNASH肝硬変症例であった。非NASH群と比べ、MELDscoreが高く(17.3 vs 23.9 p=0.049)、BMIが高かった(23.0 vs 26.0 p=0.01)がその他の背景因子は差がなかった。短期成績では、NASH群で出血量が多かった (3650 vs 4500 p=0.04)が、合併症や、入院期間に差は認めなかった。長期成績では、両群間に生存率で差を認めなかった(5年生存率 76% vs 80% p=0.79)。NASH再発は5例で認めた。再発群と非再発群で背景因子を比較したところ、再発群では術前および術後のBMIが有意に高い傾向にあった一方で、術後に発症した糖尿病や脂質異常症との関連は認めなかった。今回の検討では、NASH肝硬変に対する肝移植は短期成績、長期成績ともに非NASH群と同等であったが、症例数も少なく更なる検討が必要と思われる。また、移植後NASH再発において肥満症例は再発の高リスクであることから、再発予防において栄養指導など体重のコントロールの重要性が再認識された。