移植
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当院におけるNASH肝硬変に対する肝移植の現状と課題
蛭川 和也嶋田 圭太櫻井 悠人本田 正樹磯野 香織冨田 真裕菅原 寧彦日比 泰造
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s170_1

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抄録

背景:NASH肝硬変は生活習慣や遺伝的素因を考慮した周術期および長期管理を要する。当院では近年、術前の厳格な減量・生活習慣是正および疾患教育を目的とした食事・運動指導プロトコルを取り入れている。方法:2023年5月までの当院で施行されたNASH肝硬変に対する肝移植症例を対象として、背景・周術期情報および長期予後を検討した。結果:当院にNASH肝硬変に対する肝移植は18例、90日以内死亡1例を除く17例(生体16例、脳死1例)を対象とした。男/女 5(29%)/12(71%)例、年齢60(41-69)(median(range))歳、術直前BMI 28(21-32)、MELD score 10-33(16)、手術時間 873(738-1214)分、出血量 16541(3916-63684)g、GRWR 0.87(0.7-2.06)、1年以内死亡 2例(12%:侵襲性アスペルギルス症、肝細胞癌再発)であった。組織学的NASH再発を2例(12%)に認めた。観察期間54.6(4.8-114.8)ヶ月で5年生存率79.4%。6例にプロトコルが適用され、紹介時と術直前のBMI変化値がプロトコル群は通常管理群と比較して有意に低下し(-3.50 vs -0.09, p=0.006)、術後在院日数も短い傾向であった(46日 vs 71日, p=0.058)。一方、周術期の外科合併症、感染症、拒絶、高血圧・糖尿病・脂質異常症・慢性腎臓病(Grade 3b以上)発症、肝生検でのsteatosis、NASH再発に有意差を認めなかった。考察:NASH肝硬変は生活習慣を含めた包括的介入が必要と重要だが、適切な介入方法そその効果についてはさらなる検討が必要と考えられた。

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