2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s209_1
背景:生体肝移植においてグラフト容量の必要条件は施設により若干異なる。グラフト採取の結果、small-for-size graft(SFSG)となることもあり、結果として術後経過に大きな影響を及ぼすことがある。研究では、SFSGの生体肝移植の成績を明らかにすることを目的とした。対象と方法:2000.1-2023.3に当科で施行した初回成人生体肝移植299例のうち、ドナー年齢、グラフトサイズ、門脈圧に応じ脾摘を行うようにした2021.4以前の280例においてGRWR<0.6%(59例)とGRWR > 0.6%(221例)とを傾向スコアマッチングを用いて成績を比較した。またGW/SLV<30%(35例)とGW/SLV > 30%(245例)の成績も比較した。結果:マッチしたGRWR<0.6%(59例)とGRWR > 0.6%(59例)ではグラフト長期生着率は同等であったが、3か月生着率はGRWR<0.6%で有意に不良であった(p=0.029)。SFSS発症率もGRWR<0.6%で有意に高かった。多変量解析でGRWR<0.6%症例においてMELD、ドナー年齢がSFSS発症リスクであった。GW/SLV<30%とGW/SLV > 30%で長期成績は同等であった。GW/SLV<30%症例においてSFSS発症例がSFSS非発症例に比べMELDスコアは有意に高かったが、ドナー年齢に差は認めなかった。結語:SFSGを用いた生体肝移植ではMELDスコア、ドナー年齢が重要な予後因子であった。ハイリスク症例での選択的な脾摘の有効性に関して現在前向きに検討を進めている。