2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s263_2
【目的】生体腎移植後の無症候性の膀胱尿管逆流症(vesicoureteral reflux:VUR)の評価やマネジメントのルールは定まっていない。本研究では、生体腎移植後の無症候性症例に対する排尿時膀胱造影検査の意義について検討した。【方法】2014年から2022年までの間に愛知医科大学で生体腎移植を受けたレシピエントのうち、術後1年(以降)に排尿時膀胱造影を施行した19名(男性10名、女性9名)を対象に、VURの有無と入院を要する尿路感染症、移植腎生着率・患者生存率との関連について後方視的に解析した。膀胱尿管吻合は、全例膀胱外アプローチ(Lich-Gregoir法)で施行された。【結果】全体のVUR発生率は52.6%(10/19)だった。VURの80.0%(8/10)は畜尿時に逆流所見を認め、そのGradeは90.0%(9/10)がII、10.0%(1/10)が IIIだった。一方、全例排尿障害(残尿≧50ml)はなかった。A群(VUR あり、n=10)とB群(VUR なし、n=9)に分けて比較すると、入院を要する尿路感染症(0 vs. 1例、P=1.000)、移植腎生着率(全例生着)・患者生存率(全例生存)について2群間に差を認めなかった。【結論】対象症例数が非常に少なく観察期間が短かったことから、ルーティン排尿時膀胱造影の意義は明らかにならなかった。今後症例を重ね、病理所見を含めた長期予後の観点から検討したい。