2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s276_3
【目的】生体肝移植後の神経筋電気刺激(NMES)の効果について,周術期の骨格筋量の変化を指標として検討した.【方法】研究デザインはNMES導入前症例をHistorical Control群(CON群)とする前向き観察研究とした.対象は2017年4月から2023年3月に生体肝移植術を受けた成人症例127例(年齢 51.1±13.8歳,男性 62例,体重 63.0±13.3kg,MELDスコア中央値 13[9-18])とし,2020年4月以降は従来の術後早期離床と運動療法に加えて一日20分,週5回,4週間の両下肢NMES(ホーマーイオン研究所製G-TES)を全例に追加した (NMES群).急性肝不全,術前肝性脳症による意識障害,術後グラフト機能不全,死亡退院は解析対象外とした.主要アウトカムとして生体電気インピーダンス装置(Inbody社製)による骨格筋指数(SMI)および細胞外水分比を術前と退院時に測定し,術前後の変化を比較した.【結果】CON群53例,NMES群61例が解析対象となった.分割プロット分散分析の結果,SMIは有意な交互作用を認め両群ともに術後低下(術前/術後 CON群:7.48±1.27/ 6.19±0.99kg/m2,NMES群:7.19±1.22/6.43±1.22kg/m2)しているものの変化量はNMES群で有意に低下が軽度であった.細胞外水分比は主効果のみを認め,両群ともに術前後の変化は同様であった(CON群:0.400±0.017/0.404±0.009,NMES群:0.399±0.014/0.406±0.013).【考察】生体肝移植術後早期のNMESは骨格筋量低下の抑制に有用であることが示された.