2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s280_1
【背景】本邦一般人口の65歳時の平均余命は男性18.9年、女性24.0年とされる。肝移植における高齢レシピエント65歳以上を詳細に解析した報告は少ない。【方法】2023年1月までに施行した成人間生体、脳死肝移植768例を対象とした。18歳から64歳までの735例(若年群)と、65歳から69歳までの33例(高齢群)を比較した。高齢レシピエントの適応はperformance status 3-4を除く症例とした。【結果】若年群の平均観察期間は9.7年、高齢群は5.4年であった。若年群のMELDは17.6、高齢群は15.1であったが有意差を認めなかった(p=0.08)。生存率曲線は術後1年目までは両群とも比較的近似している一方、高齢群は術後1年超以降も引き続き生存率の低下がみられる傾向があった。高齢群の術後1年以内の死亡原因は、クリプトコッカス肺炎(n=1)、インフルエンザ肺炎(n=1)、HCV急性肝炎と拒絶によるグラフト不全(n=1)であった。術後1年以降は、肺炎(n=4、うち1例は認知症)、リンパ増殖性疾患(n=1)、心不全(n=1) 、遅発性急性拒絶反応(n=1)であった。若年群の5年生存率は86.3%に対し、高齢群は80.1%で、高齢群の生存率が有意差をもって低下していた (p=0.02)。【結論】高齢レシピエントは、移植後1年超えても引き続き注意深い経過観察が必要である。