2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s281_1
【目的】急性肝不全の予後を予測するのは困難であり, 予測モデルは確立されていない. 今回, われわれは急性肝不全昏睡型紹介患者が肝移植を施行できるかどうかの術前因子について検討した.【方法】2009年から2022年まで急性肝不全昏睡型に対して当科に紹介があった症例を肝移植施行群, 死亡群に分類し患者背景を後方視的に検討した. また死亡に対する当院紹介時臨床予測因子をロジスティック回帰分析で解析した.【結果】対象は44例, 紹介時の年齢の中央値(範囲)は50歳(20-66), 女性が17例(38.6%), MELD 29(17-54), 人工呼吸器管理が13例(29.5%), 人工肝補助療法が30例(68.2%)に施行されていた. 肝移植群は21例(47.7%)であり生体肝移植12例, 脳死肝移植9例であった. 当院初診から肝移植までの期間の中央値(範囲)は13日(2-53日)であった. 肝移植できず死亡した群は23例(52.3%)で, 当院紹介時からの全生存期間は23日(1-73日)であった. 死亡群に対する多変量解析では, 紹介時 Cre > 0.84 mg/dL (odds ratio [OR]: 15.394, p=0.047), 紹介時CRP > 1.47 mg/dL (OR: 28.600, p=0.029)が独立した予測因子であった. これら2つの予測因子の保有数別の肝移植施行割合は0個が16/18(88.9%), 1個が5/17(29.4%), 2個が0/9(0%)であった.【結語】急性肝不全昏睡型において, 紹介時のCre値およびCRP値による予後予測の可能性が示唆された.