移植
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生体肝移植後に合併したCunninghamella Bertholletiaeによる全身ムコール症の1例
平野 翔平三田 篤義大野 康成窪田 晃治増田 雄一野竹 剛北川 敬之増尾 仁志山崎 史織唐澤 斉秀清水 明副島 雄二
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2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s320_1

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抄録

【背景】臓器移植後の免疫抑制下ではしばしば真菌感染が問題となる。今回我々は、Cunninghamella Bertholletiaeによる全身ムコール症で悲劇的な経過をたどった1例を経験した。【症例】57歳、男性、肝細胞癌を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対し、ABO血液型不適合生体肝移植を施行、術前にリツキシマブの投与を行った。免疫抑制はタクロリムス、ミコフェノレートモフェチル(MMF)、ステロイドの3剤を併用した。術後12日目に発熱、β-D陽性、CTで右肺膿瘍を指摘され、ミカファンギン投与を開始。13日目に気管支鏡を施行し、糸状菌が疑われ、抗真菌薬をボリコナゾールに変更したが、肺膿瘍は増悪。20日目に肺膿瘍切除術施行、検体よりムコール族が検出され、抗真菌薬をアムホテリシンBに変更した。後日PCR検査によりC. Bertholletiaeと同定。しかし病態の増悪は止まらず、完全房室ブロック、心不全の進行、脳神経症状、急性腎不全など多彩な症状が出現した。大動脈バルーンパンピング、持続血液透析を開始したが、多臓器不全に至り、28日目に死亡した。剖検では、グラフト肝に所見はなく、ムコール心内膜炎を認めた。ここから全身に播種を来し、脳、心、腎における出血性梗塞に進展し、多臓器不全に陥り死亡したと考えられた。ムコール症は真菌感染症の中でも特に予後が厳しく、早期診断、早期治療が重要であり、移植後周術期管理において常に念頭に置いておくべきと考えられた。

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