2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s329_3
【目的】腎移植件数の増加に伴い、保存期腎不全や移植腎機能廃絶後の免疫抑制剤管理も重要となる。当院の廃絶後の免疫抑制剤管理につき、後方視的に解析する。【方法】対象は最近5年の廃絶例のうち当院で透析導入になった28名。廃絶時の平均年齢59.0歳(20-77歳)、生着期間は平均14年1か月(2か月-34年6か月)、男性21例(75%)、生体腎25例(89%)。廃絶時の臨床データ、併発疾患、廃絶後の免疫抑制剤減量法とその合併症につき検討した。【結果】廃絶時eGFRは平均8.7mL/min、平均Hb9.2g/dL、廃絶時の併存疾患は肺炎3例、尿路感染1例、蜂窩織炎1例、サイトメガロウイルス血症1例、移植後リンパ増殖性疾患1例で、感染症と悪性疾患を計8例(29%)に認めた。廃絶後の免疫抑制剤の減量法としては原則として代謝拮抗薬、カルシニューリン阻害剤、ステロイドの順に減量の方針であったが実際には副作用が強い症例を優先的に中止しており、一定の傾向は認めなかった。完全に中止できた症例は14例(50%)で、現在減量中が6例、透析施設でステロイド継続が7例、不明が1例であった。4例(21%)で減量中に移植腎の腫脹や発熱などのGraft Intolerance Syndromeを認めており、2例はステロイドパルス、もう2例は移植腎摘出を要した。廃絶前後での死亡症例は認めなかった。【結語】移植腎機能廃絶時には感染症や悪性腫瘍の併発、廃絶後はGraft tolerance syndromeに注意が必要である。