2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s176_2
2000年に始まった死体肺移植は、当初10年は臓器不足のため全国年間移植数が平均6.2件であった。10年の法改正で年40-50件となり、肺移植医は「多くの患者に移植機会が提供できる」と喜んだ。しかし20年以降急増し23年の死体肺移植は119件に到達、逆に急激な変化に対応が困難な施設も出現し何らかの診療構造改革が必要と考えられている。更に24年には「働き方改革」が導入され、問題はより複雑になった。肺移植医療の健全な維持の為には、1)施設・人員の拡大、2)関連職種とのワークシェアによる移植医の負担軽減、3)移植医の勤務体制・待遇の改善、等を軸とした改革が必要である。これらは何れも原資を必要とし、これを支えるのが診療報酬である。肺移植の診療報酬の主軸は手術点数であり、これは当初大変低かったが関連学会の努力で徐々に増額された。併せて関連の様々な保険点数も新設された。例えば、移植後患者指導管理料(12年)、麻酔の臓器移植加算料(12年)、移植後特定ICU管理料の大幅延長(22年)等である。これらの増点は単に病院に利益をもたらす為ではなく、移植医療発展の為の増資とも捉えるべきであり、現場は病院管理側にこのメッセージを正しく伝え、状況の改善に務めなければならないと思う。福岡大学は移植医療のサステナブルな発展のため、近年病院側と協議して構造改革を進めてきた。福岡の事例を紹介し、医療経済の面からの肺移植のサステナビリティーを論じる。