移植
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生体腎移植後に移植腎動脈下極枝梗塞を発症し移植腎部分壊死に至った一症例
志田原 幸稔井手 健太郎中野 亮介坂井 寛清水 誠一田原 裕之大平 真裕田中 友加大段 秀樹
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s185_2

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抄録

患者は53歳男性。糖尿病性腎症を背景とした慢性腎臓病Stage5に対して妻をドナーとした先行的腎移植術を計画した。術前に尿毒症症状が出現したため緊急血液透析を行い、全身状態安定後に生体腎移植術を施行した。ドナーの左腎動脈を2本認め、本幹と下極枝それぞれ切離し左腎を採取した。レシピエントの下腹壁動脈グラフトを用いて、バックテーブルで腎動脈を形成し1本化した後、レシピエントの右内腸骨動脈と吻合した。生体腎移植術後3日目に移植腎動脈下極枝梗塞を認め、ウロキナーゼ投与による血栓溶解療法を行った。移植腎機能発現遅延を伴い、血液透析および限外濾過を要した。生体腎移植術後13日目に移植腎尿管拡張および疼痛増悪に対して経尿道的尿管ステント留置を試みたが尿管損傷を生じ、緊急手術で尿管損傷部修復、尿管ステント留置、ドレナージを施行した。以降、移植腎機能発現を認め血液透析を離脱したものの、高熱が出現し移植腎周囲から後腹膜腔にガス産生菌による感染が疑われ、広域抗生剤投与とドレナージ継続を要した。さらに腎下極から尿漏を認めたため、生体腎移植術後63日目に移植腎壊死部除去、尿漏部縫合閉鎖術を施行した。ドレナージと尿管減圧の継続により尿漏は治癒し、生体腎移植術後162日目に自宅退院した。現在まで術後6年間、移植腎は生着中である。移植腎動脈虚血や尿漏は重要な術後合併症であり、治療に難渋した症例を文献的な考察を加えて報告する。

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