移植
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当科における重症症例の術後成績と適応限界
市田 晃彦赤松 延久高橋 龍玄千代田 武大西岡 裕次郎三原 裕一郎はい 成寛高本 健史河口 義邦長谷川 潔
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s196_1

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抄録

【背景】当科では脳症V度、P/F比200以下の呼吸障害、コントロール不能な感染症を移植禁忌とし、該当しない症例については積極的に肝移植を行っている。【方法】このような方針で2022年までに行なった成人生体肝移植710例について、ACLF症例、high MELD症例(MELDスコア30以上)の術後成績を提示する。【結果】ACLF27例の背景肝疾患はHBV陽性6例、自己免疫性肝炎5例、原発性胆汁性胆管炎(PBC)4例、その他10例でMELDスコアの中央値は32(範囲16-48)であった。ACLF症例の手術時間、出血量、術後在院日数の中央値はそれぞれ688分(範囲495-940)、5340ml(範囲1810-30790)、53日(範囲20-199)であり、手術時間のみ他の症例より短かった(P=0.014)。ACLF、その他の症例の5年生存率は72.3%、85.2%であった(P=0.331)。High MELD62例の背景肝疾患は急性肝不全16例、HCV陽性7例、PBC7例、アルコール性6例、HBV陽性5例、Wilson病5例、その他16例でMELDスコアの中央値は35(範囲30-48)であった。High MELD群の手術時間、出血量、術後在院日数の中央値はそれぞれ667分(範囲419-2405)、6360ml(範囲1710-58350)、55日(範囲20-199)、でありlow MELD群より手術時間は短く(P=0.0001)、出血量は多く(P=0.001)、術後在院日数は長かった(P=0.003)。High MELD群、low MELD群の5年生存率は72.7%、85.9%(P<0.001)であった。【結論】ACLF、high MELD症例においても5年生存率70%以上であり、当科の治療戦略は妥当と思われた。

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