2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s255_2
【症例】30代男性【主訴】腹痛、黄疸【既往歴】なし【現病歴】受診2ヶ月前の健康診断で肝機能異常を指摘されたが自己判断で精査は行われず、受診2週間前から食欲不振、腹痛を自覚、皮膚黄染を指摘され近医を受診した。原因不明の慢性肝障害の急性増悪として当院へ紹介となった。【臨床経過】入院時採血で肝障害・腎障害を認めた。腫瘍マーカーは、AFPは陰性、PIVKAは軽度上昇していた。血中銅、尿中銅が軽度上昇していたため、鑑別診断としてWilson病を考慮した。CTでは、肝内に明らかな腫瘍性病変は認めなかった。ステロイドパルスや腎代替療法などを含む急性肝不全・腎不全の治療を行うものの、肝障害は悪化した。入院39日目に脳死肝移植の選定を受けることができたため、脳死肝移植が施行された。摘出肝は肉眼的には多数の再生結節を伴う硬変肝であり、腫瘍性病変は視認できなかった。しかしながら、病理組織検査でmicro levelでびまん性に広がる微小結節を認め、免疫染色ではCK19陽性・Hep par1陰性であり、肝内胆管癌の診断となった。術後のCTでは術前に認めなかった溶骨病変を認め、肝内胆管癌の骨転移の診断となり、最終的にはBSCの方針となった。【考察】移植後あるいは切除後に肝内胆管癌と診断される症例は一定数存在するが、いずれも腫瘍性病変はすでに同定されていることが多い。びまん性に広がる肝内胆管癌の報告は非常に稀であり、示唆に富む貴重な症例と考え報告する。