移植
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腎移植と環境感染対策
小崎 浩一岩崎 健一阿部 由督佐藤 好信諏訪 達志
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s261_1

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抄録

免疫抑制下にある腎移植患者は健常人では問題とならない環境病原体でも重篤な感染症を発症することがある。感染の多くは環境表面の付着病原体が患者に感染して発症する外因性感染であり、手指消毒や生活・職場環境の感染対策が重要である。治療に難渋した腎移植2例を報告する。【患者1】41歳、男性。生体腎移植。移植13年後左胸水貯留、発熱・頭痛・嘔気・嘔吐・痙攣発作・意識喪失を認め血液髄液検査でCF髄膜炎と診断。左肺上葉に球状陰影あり切除CF肉芽腫と診断。職業が清掃業でその際の空気感染が原因と考えられた。【患者2】36歳、女性。生体腎再移植。移植前尿培養は陰性。即時機能発現POD 14退院。POD 33発熱、尿培養でEscherichia coli、多剤耐性緑膿菌(MDRP)を検出、MEPM+AZT+AMKで治療、POD48尿培養が陰性化退院。POD 73職場復帰 (清掃業)、POD 89尿培養でMDRP検出。免疫抑制剤減量、AZT+AMKで治療。POD 103尿培養陰性化退院。そこで最近の腎移植5例中4例にグラム陰性桿菌(GNR)UTIを発症したため、GNRの伝播方式が接触感染であること、環境培養で病室シンクより緑膿菌が検出されたことから、尿道留置カテーテルの洗浄方式を水道水による微温湯+石鹸から、陰部清拭用ワイプに変更、以後UTIは未発生。【結論】感染予防のため生活・職場環境整備の指導、周術期では患者・医療者の接触感染予防策(とくに手指消毒)を徹底し、環境培養・水系システムの管理を含めた環境整備が重要である。

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