2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s285_1
免疫抑制剤の発達により良好な移植成績が広く報告されている。移植腎予後に免疫学的素因が強く影響する一方で、周術期のグラフト血行動態も重要な要因と考えられる。これまで移植腎再灌流時の血圧管理に関して一定の見解があるものの、例えば再灌流時のレシピエントの適正な血圧などの明確な基準はない。
2014年から2023年に大阪医科薬科大学で施行した生体腎移植において、移植腎再灌流時レシピエント血圧と平常時ドナー血圧との差と初尿時間が、移植腎予後に影響するかを調査した。再灌流時レシピエントと平常時ドナーの血圧差(ΔBP=レシピエント血圧-ドナー血圧)で+ΔBPと-ΔBPの2群に分けたところ、+ΔBP群では初尿時間が有意に短いことが示された。またTIT(総阻血時間)を考慮すると、+ΔBPかつlong TITで初尿時間が短いことが分かった。
早期の腎機能・急性拒絶発症率に差は見られなかった。長期の予後では慢性拒絶の発症率に差はなく、腎機能は-ΔBP群で低下していたものの、今回の検討では有意差は認めなかった。再灌流時血圧差は生着率に影響を与える可能性があり、さらなる調査が必要と考えられる。