2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s293_2
背景:肝移植後腎機能低下例におけるエベロリムス(EVR)導入効果の知見は乏しい。本研究では、末期腎不全リスクのサロゲートマーカーである、推算糸球体濾過量(eGFR)の年次変化量:eGFR slope(mL/min/1.73m2/year)を用いた後方視的検討を行った。方法:1997年から2020年3月までに当院で肝移植を受けた成人患者214例を対象とし、(1)肝移植後2年以内にeGFR<60となりEVRを開始した患者(早期導入群)と、eGFR<60かつEVR非導入患者(非導入群)のeGFR slopeの比較、(2)肝移植後2年を超えてeGFR<60となりEVRを開始した患者(慢性期導入群)におけるEVR導入前後のeGFR slopeの比較をした。また、腎生検の結果も検討した。結果:早期導入群20例、慢性期導入群16例、非導入群49例であった。移植後4年までのeGFR slopeは非導入群に対し早期導入群で有意に改善した(2.18±1.14 vs 0.18±0.65, P<0.01)。一方、慢性期導入群におけるeGFR slopeは導入前後で有意差を認めなかった(-2.43±2.69 vs -2.08±1.71, P=0.84)。腎生検は10例に実施され、カルシニューリン阻害薬腎症の確診が1例、疑診2例、感染が1例、高血圧や糖尿病を背景とした慢性腎障害が6例であった。結論:EVRの腎保護は,移植後早期では効果が認められたが,慢性期では限定的であった。