移植
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現行の副甲状腺自家移植の有効性に関する検討
萩原 義也稲垣 明子猪村 武広佐藤 真実片野 匠鈴木 翔輝粕田 恭平木村 美咲奥平 貴成中島 範昭石田 孝宣渡邊 君子後藤 昌史
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s300_1

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抄録

目的)副甲状腺は筋肉内への自家移植で生着すると考えられている。しかし、同じ細胞移植である膵島移植の結果とは大きく乖離し、臨床では全腺摘出下の評価が困難である事を鑑みると、その効果が科学的に立証されているとは言い難い。そこで副甲状腺を完全摘出した動物モデルを活用し、現行の副甲状腺移植の実際の有効性を検討した。方法)5-アミノリブレン酸(75mg/kg)を活用し副甲状腺を全摘したラットのうち、術後15分の血清PTHが0のケースのみ実験で使用した。臨床に準じ筋肉内移植を実施した群(移植群、n=22)と実施しない群(非移植群、n=19)を設置し、カルシウム剤を投与せずに90日経過観察した。血清PTH、血清Ca、生存日数より移植効果を評価した。結果)副甲状腺全摘後90日の血清PTHは、移植群(42.3±23.6 pg/dL)の方が非移植群(1.8±1.4pg/dL)より高い傾向を認めたが、術前値に対する相対比率は18.1±12.9 %に留まった。血清Caは両群とも改善傾向を認めなかった。移植群の生存日数(76.5±5.7日)は、非移植群(59.3±5.1日)より軽度延長する傾向が確認された。考察)全摘モデルにおける副甲状腺生着率は膵島移植の場合とほぼ同等であり、現行の筋肉内移植では十分な効果が得られない事が判明した。膵島移植の場合と異なり僅かなグラフト機能でも生命予後を改善する可能性が示唆されたが、移植効果を高めるには他の細胞移植同様に移植部位やscaffoldの至適化が必要であると考えられる。

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