2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s312_2
【目的】移植成績の向上には、拒絶反応の制御が重要である。特に不可逆性の臓器障害が起こる前に免疫抑制薬を追加投与することが求められる。このためには、拒絶反応の早期検出が重要となるが、グラフトの生検病理等の侵襲的検査以外にこれらを実現可能とする検査は存在しない。我々は、T細胞の活性化におけるTCRの局在変化に着目し、末梢血を用いたT細胞関連拒絶反応の新規診断法の開発を進めている。TCRの局在変化は、T細胞と標的細胞の反応後5分以内に起こる現象であるため、拒絶反応に関連するT細胞を迅速かつ特異的に検出できる可能性がある。本研究では、ブタ同種腎移植モデルを用いたコンセプト検証を目的とした。
【方法】免疫抑制薬非投与におけるブタ同種腎移植モデルを用いて検証を実施した。レシピエントの末梢血とドナーPBMCを混合し、TCRの局在変化を指標としてレシピエントT細胞におけるドナー細胞への反応性を移植前から移植後13日目まで評価した。また、移植後7、13日目の生検サンプルを用いて病理解析を実施した。
【結果】移植後4日目に、ドナーPBMCとの混合条件においてTCRの局在変化を示すT細胞が増加した。一方、非ドナーPBMC細胞への反応性の増加は認められなかった。また、7、13日目の病理解析の結果、急性拒絶反応が認められた。
【結論】末梢血を用いてT細胞関連拒絶反応を検出できる可能性を示した。現在は、治療効果モニタリングの可能性検証を進めている。