2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s313_2
【背景】A病院は2008年より三次救急外来全症例の同伴者に対して、三次救急外来調査票(以下、調査票)を用いた臓器・組織提供(以下、提供)に関する意思確認を実施している。調査票の配布率は直近3年間で低下傾向であり、未配布の約半数はその理由が不明であった。この課題に対して調査票の見直しと運用改定を実施したため、その成果を報告する。
【方法】改定前・後、各6ヶ月の調査票配布率や未配布の理由不明の割合を比較した。また、調査票に関するカルテ記事から運用改定に伴う効果について検討した。
【結果】配布率は改定前80%、後75%。理由不明の未配布は前52%から後1.7%に改善。提供件数は前3件、後3件。調査票の回答結果を踏まえた救急外来看護師によるタイムリーな家族介入は増加し、入院病棟に引継ぐ内容が具体化された。
【考察】悲嘆や混乱、遅れて病院に到着する等の状況にある配布対象者に対する「理由不明の未配布」は、調査票の配布時対応を明示したことにより生じ難くなった。また、調査票の設問を見直したことで、提供に関わる意向の具体的な確認に近づいた。調査票の回答結果を踏まえた看護師によるタイムリーな家族介入は、提供に関する意思尊重の一端に繋がってきている。現時点では主観的評価に留まる段階であるが、患者・家族の意思尊重を高めるツールとしてデータを精査しながら更に活かしていきたい。