2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s333_2
【目的】2022年以降、新型コロナウイルス・オミクロン株が流行。当院で診察したCOVID-19患者で、免疫抑制患者における重症化の割合を評価し、その治療戦略として、中和抗体と抗ウイルス薬を組み合わせて投与した。定期的にウイルス量、抗体価を測定、ウイルスの消失を確認できるまで投与を継続し、その投与期間を評価した。【方法】当院で2022年1月-12月に診察したCOVID-19患者は10729例で、そのうち免疫抑制患者は286例であった。その中で、ワクチンを3回以上摂取している、臓器移植後の30名では有意にS抗体価が低い傾向が見られた。臓器移植後の患者で中和抗体または抗ウイルス薬を投与した27例について評価した。【成績】27例の年齢は56歳、腎移植後が20例、肝移植後が7例、中等症IIが3例(11%)、重症が4例(15%)であった。中和抗体または抗ウイルス薬の投与期間は10-15日間であり、発症から隔離解除までの期間は19日であった。経過は死亡1例(4%)、自宅退院23例、転院3例であった。死亡した1例以外では、移植臓器機能は保護し得た。【結論】一般的にオミクロン株は重症化率が低いとされているが、免疫不全状態では、中等症II以上となる確率も高かった。多くは中和抗体や抗ウイルス薬で改善を認め、移植臓器を保存し得たが、一方で救命できなかった症例も見られ、また、抗ウイルス薬の長期投与で治療中に薬剤耐性遺伝子変異を認め、治療の変更を余儀なくされた症例もみられた。