移植
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小児肝移植における腹壁閉鎖困難例の検討
高橋 良彰前田 翔平内田 康幸吉丸 耕一朗松浦 俊治田尻 達郎
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s339_3

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抄録

【はじめに】乳幼児例の肝移植はグラフトが大きく、腹腔内に還納することでグラフトの血流障害や腹部コンパートメント症候群を起こすことがある。今回、当科の腹壁閉鎖困難例を検討した。【対象と方法】現在までに肝移植を施行した乳児例57例を対象とした。腹壁閉鎖困難例18例と腹壁閉鎖可能例39例を後方視的に比較検討した。腹壁閉鎖困難例はゴアテックスシートを用いて閉腹した。【結果】腹壁閉鎖困難例は閉鎖可能例と比較して、性別、移植時月齢に有意差は認めなかったが、有意に体重が小さかった(5,723 vs 6,425g)。グラフト重量、GRWR、GV/SLVはそれぞれ175 vs 202.5g, 3.03 vs 3.07%, 81.8 vs 86.3%と両群間に有意差は認めなかった。グラフトの種類は、減寸グラフトの割合が腹壁閉鎖困難例で有意に多かった(61 vs 26%)。血管合併症は腹壁閉鎖困難例で1例(5.6%)、閉鎖可能例で5例(8.8%)認め、再手術を要したが、有意差はなかった。ゴアテックスは中央値3カ月で摘出されており、全例腹壁閉鎖可能であった。手術時間は中央値130分であり、摘出までの期間が1カ月以内の症例は癒着が比較的軽度で、手術時間も短い傾向にあった。【結語】減寸グラフトを要する低体重児は腹壁困難の高リスクであった。全例摘出可能であったが、癒着例も多く、摘出時期に関しては更なる検討が必要である。

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