移植
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悪性疾患の既往のある腎移植患者の臨床的検討
宮内 勇貴大川 大坂本 みき澤田 貴虎大西 智也渡辺 隆太西村 謙一福本 哲也三浦 徳宣菊川 忠彦雑賀 隆史莖田 昌敬野田 輝乙岡 明博佐藤 武司
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s354_3

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抄録

【目的】移植後に悪性疾患が発見された場合、移植前に根治的治療を行い、一定の待機期間が必要となる。当院での移植前悪性疾患の既往歴がある患者を評価し、文献的考察をあわせて、待機期間の検討を行いたい。【方法】当院で2006年以後行った腎移植148例中、悪性疾患の既往がある11症例(7.4%)における15悪性疾患を対象とした。各症例の経過を報告する。【結果】患者は男性が7症例で、年齢中央値は67歳(33~77歳)であった。大腸・直腸悪性腫瘍が4疾患、胃悪性腫瘍が2疾患であった。1症例では腎盂癌、尿管癌、膀胱癌を合併しており全尿路全摘除術が行われた。5例は移植前のスクリーニング検査で発見された悪性腫瘍であり、根治治療後に移植をおこなった。2例の大腸腺腫内癌や小径の胃GIST(Gastrointestinal stromal tumor)、小径の大腸のNET(neuroendocrine tumor)の症例は、腫瘍専門医と相談の上、待機期間を短縮して腎移植をおこなった。基底細胞癌が移植後2か月、大腸腺腫内癌が移植後6か月で再発したため、それぞれ治療をおこなった。現在、他因死の1症例の他は、癌なし生存中である。【考察】海外の近年の報告では、約2年から5年の待機期間の設定の他、待機不要な場合なども提示されている。治療の進歩や本邦ならではのスクリーニングの普及などを鑑みて、適切な待機期間の後に移植を受けることができるよう検討すべきと考える。

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