2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s355_1
【緒言】腎移植の生着率や生存率が向上してきているなか、臓器移植後には免疫抑制やある種のウイルス感染などを背景として悪性腫瘍を発症しやすいことがよく知られている。【方法】当院で1973年9月から2023年12月までに施行された腎移植患者582人における腎移植632例(生体腎移植441例、献腎移植191例)を対象に悪性腫瘍の種類や発症時期、転帰などを検討した。【結果】悪性腫瘍の発症は腎癌13例(移植腎発生1例)、子宮癌11例、乳癌10例、皮膚癌10例、結腸癌9例、胃癌8例、リンパ腫9例、肝癌7例、肺癌5例、甲状腺癌3例、胆嚢・胆管癌3例、前立腺癌2例、喉頭・咽頭癌2例、膀胱癌1例、造血器腫瘍2例であった。【考察】移植後悪性腫瘍の新規発生頻度上昇は既知の事実であり、長期免疫抑制による腫瘍細胞増殖や免疫抑制剤による発がん作用などの指摘がある。悪性腫瘍は予後に影響する合併症であり、早期発見に努めることが重要と考えられる。当院での腎移植後に発生した悪性腫瘍に関して、若干の文献的考察を加え報告する。