2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s374_2
【はじめに】Passenger Lymphocyte Syndrome(PLS)は、ABO血液型マイナーミスマッチの臓器・造血幹細胞移植後に、ドナー由来Bリンパ球から産生された抗赤血球抗体により一過性に溶血反応がみられることがある病態である。今回我々は脳死肺移植後にPLSを呈した症例を経験したので報告する。
【症例】患者は10歳代女性、血液型はA型RhD陽性、不規則抗体陰性。
【経過】徐々にHbが低下し術後16日目に7.4 g/dLとなった。その際、赤血球輸血依頼があったため患者同型赤血球製剤と交差適合試験を行ったが不適合(陽性)となった。この検体で血液型検査を行った結果、通常A型の血漿中には産生されない抗Aを検出した。直接抗グロブリン試験陽性となり、抗体解離試験を行った結果からも抗Aが確認された。脳死ドナーの血液型がO型であったためPLSと考えられた。担当医に報告し、赤血球輸血はO型とすること、継続的に溶血性貧血の発症がないか確認することを提案した。約2ヵ月後に転院、約6ヵ月後に来院した際の検体で抗Aの消失を確認した。
【考察】PLSは無症状または赤血球輸血を含む対症療法で対応可能な場合が多く、本症例では輸血検査で抗Aを検出したことにより発覚した。ABOマイナーミスマッチ肺移植後の10%でPLSを発症したとする報告もあり、移植後に交差適合試験陽性や溶血所見を認めた場合、ドナー血液型の確認、ABO不適合移植の場合はPLSも考慮し輸血管理を行う必要があると考えられた。