2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s376_1
【背景】iPS細胞から分化誘導した平滑筋細胞で血管様構造体を作製した報告はあるがスキャフォールドフリーの構造体の報告は少なく、また他の臓器への応用は確立していない。iPS細胞から神経堤細胞(NCC)を介した間葉系幹細胞(iNCMSC)の誘導法は凍結や大量の細胞ストックに利点があるとされる。今回iNCMSCを平滑筋細胞へと分化誘導し、3Dバイオプリンタによる組織構造体の作成とラット気管への移植を行い評価した。【方法】平面培養したiNCMSCを、FBS含有DMEM培地にTGFβ1を添加した(TGFβ1群)と添加しない群(DMEM群)で28日間培養し、蛍光免疫染色での平滑筋マーカーの発現を評価した。TGFβ1群の細胞のスフェロイドを用いて3Dバイオプリンタで管状構造体を作成し、21日間培養したのちシート状に成形しラット頸部気管前壁に作った全層欠損部に平滑筋パッチとして移植した。【結果】TGFβ1群では免疫細胞染色で平滑筋マーカーであるαSMA、カルポニン、ミオシン重鎖が強く発現し細胞収縮に関与するとされるストレスファイバーも観察された。構造体のラット気管移植後28日の組織学的評価で、生着と血流が確認され、レシピエントの組織から上皮が進展し気管構造が維持された。【考察】iPS細胞から誘導した平滑筋様細胞による組織構造体は、移植グラフトとして気道欠損部を充填し、組織修復の足場として有用であった。