移植
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妊娠前からの多職種連携により良好な妊娠分娩転帰を得た心臓移植後妊娠の一例
柿ヶ野 藍子神谷 千津子小川 紋奈手向 麻衣肥塚 幸太郎西中川 遥井倉 恵渡邉 琢也堀 由美子塚本 泰正澤田 雅美小西 妙岩永 直子金川 武司吉松 淳
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2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s380_2

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抄録

【目的】心臓移植後女性の妊娠出産は、日本では経験が限られている。心臓移植後妊娠の一例を経験したので報告する。

【症例】35歳の女性。拡張型心筋症による重症心不全に対して27歳時に植込み型左室補助人工心臓(HeartMate2)を装着し、30歳時に心臓移植が行われた。移植後はタクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ステロイドによる免疫抑制療法が行われた。挙児希望があり、移植医療部と産婦人科より本人と家族へ妊娠出産のリスクを十分に説明し、理解と同意を得た上で、34歳時にMMFをアザチオプリン(AZA)へ変更した。ドナーと夫のヒト白血球抗原(HLA)はB62とDR4で一致していたが、患者はドナー特異的抗HLA抗体(DSA)を有していなかった。35歳時に自然妊娠が成立した。移植医療部、産婦人科、薬剤部で協議し、TAC目標血中濃度の変更なく、妊娠5週以降分娩前までTAC2.2mg/日から10mg/日の範囲で調整したが、目標濃度の達成は困難であった。妊娠36週に妊娠高血圧腎症を発症したため、妊娠37週に分娩誘発を行い、硬膜外麻酔併用下に3187gの女児を経腟分娩した。産後10日に実施した心筋生検で拒絶反応を認めなかった。経過中にDSAの検出はなかった。

【結論】妊娠前から計画的に薬剤調整を行い、妊娠中のモニタリングにより拒絶反応なく、生児を得られた。心臓移植後妊娠では、移植科と産婦人科を中心に多職種が連携することが重要である。

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