2024 年 59 巻 Supplement 号 p. s380_1
背景:LVAD(左室補助人工心臓)装着患者では経過中に大動脈弁閉鎖不全や右心不全の発症が懸念されるが、右心不全は外科的介入が困難である。症例:12歳女児。特発性拡張型心筋症に対して9歳時に植込型LVAD装着術を実施、術直後の右心不全に対し、3日間の体外式右心補助および二期的胸骨閉鎖術を要した。退院前のカテーテル検査ではRVEF 23%。外来通院中に、大動脈弁閉鎖不全の進行と右室機能の増悪を認め (RVEF 12%)、12歳時に蛋白漏出性胃腸症と診断し入院。精査にて重度大動脈弁閉鎖不全、重症右心不全を認め、外科的介入の適応と判断した。手術は胸骨再正中切開、常温人工心肺使用下に行い、大動脈弁閉鎖不全に対しては大動脈弁直接閉鎖を実施、右心不全に対してはフォンタンコンバージョン(三尖弁fenestratedパッチ閉鎖、肺動脈弁パッチ閉鎖、心房中隔欠損作成、グレン吻合、心外導管型(16mm ePTFE) TCPC)を施行した。術翌日に抜管、術後12日目にICU退室。術後、硬膜下血腫を合併し開頭血腫除去術を要したが、神経学的後遺症もなく、術後47日目に独歩退院。外来通院にて心臓移植待機中であり、アルブミン値も1.9から2.6g/dLに改善を認めている。結語:LVAD装着後遠隔期の蛋白漏出性胃腸症を伴う重症右心不全に対して、フォンタンコンバージョン手術(右心バイパス手術)は外科的治療の選択肢となりうる。